ボディコントロールルーム

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手のリハビリ〜腱の滑走を促す

 

手の術後リハビリでよくグーパー練習をします。物品の操作練習や握り動作もするでしょう。しかしそれだけでは手の円滑な使い方が獲得できない場合もあります。もしかしたら腱の滑走が不十分かもしれません。

今回は手のリハビリの、腱滑走についてです。

 

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手のリハビリとは

手の外傷や術後に手指の動きが不十分でリハビリをします。指や手首の骨折後、腱損傷術後が多いでしょう。

術後は病院でリハビリしますが、退院後は高齢の場合通院が困難で手のリハビリが終了するケースがあります。

そのため介護保険領域でも手のリハビリ技術が求められることがあります。

 

 

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介護保険での手のリハビリ

急性期リハを終えていることがほとんどですので、しっかりと手の動きを引き出します。

 

時期によっては骨や腱の癒合状態に注意し、無理な衝撃は避けます。

 

 

腱滑走が不十分な場合の手のリハビリ

手関節や指に可動域制限がないのに手が使いにくいケースがあります。

筋力低下も要因になるのですが、筋力があっても手が動かしにくい。

そんな場合は腱滑走が不十分かもしれません。

 

腱滑走とは

腱は筋肉の収縮により近位方向に引っ張られます。体幹に近づけば近位、離れれば遠位と表します。この筋収縮による腱の動きが近位への腱滑走。逆に筋が伸長されて腱が引っ張られることを遠位の腱滑走と言います。

最大限に近位と遠位両方向に腱が滑走することで、円滑な手指の動きが獲得できます。

 

 

腱滑走の評価

滑走不足の原因

①腱の癒着

擦り傷などで皮膚が治る際にカサブタができます。術部も同じで皮下組織が損傷するとカサブタができるように修復されます。その過程で様々な軟部組織同士が結合してしまったことを癒着と言います。癒着を取らないと腱の動きが妨げられることになります。

 

②拮抗する筋肉が硬い

拮抗筋が硬く緊張が高いと、主動作筋の働きに抵抗が加わり腱の滑走が不足することがあります。拮抗筋をストレッチしたり、主動作を補助したりして腱の滑走を促せます。

 

③筋力低下

単純に筋力低下が強いと近位への腱滑走が不足します。筋力トレーニングや、収縮を促す声がけで少しずつ腱滑走を促します。

 

 

癒着の把握

単関節で他動可動域制限がないという前提で話を進めます。

ポイントは手指と手関節の複合運動で見ることです。

 

屈筋腱に癒着がある場合

手指と手関節の複合伸展に制限が出ます。

脱力した状態から手を伸展位にすると手指が屈曲します。

 

伸筋腱に癒着がある場合

手指と手関節の複合屈曲に制限が出ます。

脱力した状態から手を屈曲位にすると手指が伸展します。

 

腱滑走の方法

なるべく早期に滑走させる

急性期には毎日傷が少しずつ修復します。癒着も毎日進行します。そのため癒着が軽度の段階から腱滑走を促し、癒着の防止に努めます。

その日に腱滑走させても次の日にはまた癒着するということが、術後2週間は頻回です。

癒着が強くなるほど強い腱滑走が求められ、痛みも生じやすくなります。早期から毎回腱滑走を促しましょう。

 

複合運動の意識

手と手指の複合運動で、最大の腱滑走を促します。

握りながら手を掌屈で、伸筋腱の遠位滑走、屈筋腱の近位滑走に、

パーで手を背屈で、伸筋腱の近位滑走、屈筋腱の遠位滑走になります。

自動運動で行い、他動的に運動を補助し可動域がまだ拡大する場合はその動きに癒着か筋力低下が認められることになります。

 

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屈筋より伸筋の強化

手は伸筋より屈筋の筋力が強いです。そのため癒着が落ち着いてからでも屈筋腱の癒着は剥離しやすいです。

伸筋の場合力が弱く、癒着が強固だと剥離に難渋します。早期に伸筋群のアプローチをすることが大切です。

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指伸筋の強化が特に大切

指を伸展するのに内在筋の伸展と外在筋の伸展があります。違いはMP関節にあり、MP関節も伸展させるのが外在筋です。

よく内在筋優位に指を使用し、外在筋の働きが不十分なことが見られます。手は屈筋が強くなる特性があり、MP関節を屈曲させる内在筋が強く働くためです。

 

内在筋をしっかりストレッチ(MP伸展IP屈曲)し、外在筋の収縮を促して手のバランスを整えましょう。指の外転でも少し内在筋がストレッチできます。

訓練はMP伸展してから指伸展位を保ち、手も背屈していきます。手は中間位から始め、しっかり指伸筋の筋力を促通しましょう。

指の伸展不足が手を使いにくくすることもよく見られ、手のバランスを整える手技はとても実用的です。

 

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癒着剥離はマッサージでも可能

皮膚は柔らかく指で広範囲にグリグリと回すことができます。術創部は癒着や軟部組織の硬化のためそのようには動かないことがおおいです。

患者さんも縫合部は少しグロテスクに感じ、触れるのを避ける傾向にあります。

過度に気にすると痛みではない刺激も痛みと間違えて捉えてしまい、痛みが慢性化する場合もあります。

 

術部周囲の軽度の皮膚マッサージは有効です。触れることに慣れることで、セルフマッサージを意欲的に取り組めます。

早期に皮膚マッサージを実施し、少しでも癒着改善を促しましょう。

軽く指で圧迫し、そのまま一方向にゆっくり伸長します。それを四方や八方に行い、痛みがなく創部に問題がなければ広範囲に回します。

 

その他、腱の近位滑走を促しながら遠位方向に皮膚を引っ張るようにする方法もあります。

癒着の具合を評価しながら必要なアプローチをしましょう。

 

 

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おわりに

人間の手はとても発達しています。手が使えることでより自分らしく生きることができます。痛みがなく少しでも機能的な手が獲得できるようリハビリしましょう。

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