肩が挙がらない原因とストレッチについてはこちら。
さらにリハビリが必要になる場合です。
【リハビリの機能的目標とアプローチ】
- 腱板の機能改善
- 肩関節の柔軟性向上
この2点の評価とアプローチが主です。
《腱板の機能改善とは》
腱板とは、肩のインナーマッスルです。肩のリハビリが必要な場合、腱板は硬くなり力もあまり入っていないことが多いです。
腱板をしっかり使えるようにすることが重要です。
腱板の主な機能は肩運動時の上腕骨頭を近位方向へ引き込むことです。
腱板の機能が低下すると肩関節の運動が減少し、肩甲骨が代償してきます。アウターマッスル優位で肩と肩甲骨を使い、肩関節が硬くなるのです。
まずはアウターマッスルを整え、インナーマッスルを調整する必要があります。
先にインナーマッスルを調整しようとしてもアウターマッスルが過剰に反応し、ストレッチや筋収縮が阻害されるのです。
《アウターマッスルを整える》
僧帽筋、三角筋、広背筋、大胸筋、前鋸筋がメインです。その他二頭筋や三頭筋腱長頭も必要に応じてストレッチが必要です。
①まずは肩甲骨を支える僧帽筋(上部繊維)を整える
- 上腕骨を機能的姿位で保持。
- 肩の弛緩を感じる。+ダイレクトストレッチ。
- 肩甲骨を下制させる。+ダイレクトストレッチ。
- 徒手抵抗をかけながら3~5回挙上を促す。+ダイレクトストレッチ。
肩がホヤホヤに柔くなればOK!
相当硬めな場合は④を再度行う。僧帽筋の収縮をしっかり引き出して感じましょう。
そもそも機能的姿位で保持が難しい場合や、肩甲骨の可動性が少ない場合はその範囲内で無理せずストレッチしましょう。
②三角筋、広背筋、大胸筋は同時進行で整える
このポジションでストレッチ!
- 上腕骨を機能的姿位で保持。
- 三角筋後部繊維を広範囲に・大胸筋停止部付近をダイレクトストレッチ。
- 肩関節60°~90°まで他動屈曲。(アウターに過剰収縮が入らないところまで)
- 肩屈曲位のまま三角筋後部繊維・広背筋停止部付近をダイレクトストレッチ。
- 必用に応じて二頭筋・三頭筋もマッサージ+ダイレクトストレッチ。
肩を覆う筋肉達を全般的にほぐしてあげましょう。硬めなところは入念にストレッチ!
③前鋸筋の収縮を促して肩全体のアウターを協調運動させる。
- 肩前方突出運動を代償動作に注意して行います。
肘は伸展位、肩が挙上位にならないよう肩甲骨を上部からしっかり押さえましょう。
肩の屈曲角度を固定して最初は自動介助運動で、最大域まで到達したら自動運動で5回前方突出。
突出後はきちんと肩甲骨を床面に付けるくらい押し戻します。
前鋸筋の弛緩と収縮を繰り返し、それに伴う肩甲骨の補助動作が連動するようにアシストしましょう。そんな気持ちが大事です。
《腱板(インナーマッスル)を整える》
まずは腱板が過剰収縮しないよう弛緩を促します。
- 機能的姿位で上腕骨を保持する。
- 腱板停止部周囲をストレッチ。
- 肩屈曲位で同じくストレッチ。
- 肩前方突出位円運動で腱板の軽い筋収縮を促す。
- 肩水平内転させ腱板ストレッチ。
- 肩最大他動屈曲。+ダイレクトストレッチ。
- 肩最大自動介助運動、自動運動。
※注意と補足
- 保持しても過緊張が抜けない場合、マッサージやダイレクトストレッチを外旋筋群に入念に実施。いずれ機能的姿位で脱力して保持できます。
- さらに腱板の圧痛が取れるくらいストレッチ。
- 屈曲位にすることで腱板が伸長されます。伸張された状態(過剰収縮が入らないところ)でダイレクトストレッチ。
- 腱板が骨頭を固定するよう肩を床方向に寄せたまま運動。近位への収縮位を保持する!
- 肩甲骨内転しないよう代償を抑制する。
- ここでも骨頭が遠位にずれないよう保持に注意。腋下からダイレクトストレッチ。
- 腱板の求伸性収縮が抜けないよう上腕をサポートして自動介助運動。保持できそうでれば最後に自動運動でトレーニング。
《肩関節の柔軟性拡大を図る》
筋運動が円滑なのに明らかに可動していて動かず止まることがあります。
その場合は関節そのものの硬さが原因です。筋の伸長が図れていれば、関節のストレッチもスムーズに導入できます。合わせて行いましょう。
円背等不良姿勢により肩甲骨内転に合わせて肩もどんどん内側に巻き込んでいきます。
肩関節を肩甲棘に沿うラインまでストレッチします。
- 胸筋群・肩関節前方軟部組織のストレッチ。
- 肩甲骨を外側にストレッチ。
- 上腕骨骨頭を肩甲棘に沿うラインまで押す。
- 肩屈曲や外転・外旋位の最終域で関節包をダイレクトストレッチ+持続的伸長。
※注意と補足
- 圧痛が消失するよう軽めに、徐々にストレッチを強めます。
- 内側縁から肩甲骨全体を保持するように動かします。
- 肩甲骨を外側に固定したまま肩前面から少しずつ押します。
- 骨頭の位置がぶれないよう最終可動域まで他動運動し、ストレッチします。
【評価結果を覚えておく】
- どこの筋肉の緊張が高いのか、過剰収縮しやすいか、硬いのか。
- 関節のどの辺り(前方・後方・下方・上方)が硬いのか。
- 可動範囲はリハビリ前後でどの程度だったか。
これらの様子は毎回把握するようにしましょう。そうすることで必要なアプローチが明確になり、可動域訓練に結果が出てきます。
【五十肩は安静で治るは本当か】
治るの捉え方によります。痛みは安静で消えます。腕も肩甲骨が代償するのでなんだかんだ使えるでしょう。
しかし肩関節は硬いままです。
普段しない運動やスポーツ等、過剰に肩に負担がかかればまた痛みますし、腱板が損傷する可能性もあります。
再発しないための、根本的な肩の改善が望ましいでしょう。