腋窩介助とは
腋窩介助とは、『ワキ』から介助者が体を支え、立ち姿勢や歩行、階段昇降など主に移動時にサポートすることです。
簡単なようで、奥深いです。
セラピストはプロとして、腋窩介助を通してリハビリに活かしたり、家族などの介護者に伝達したりすることが求められます。
腋窩介助の対象
安定した立位や歩行ができない方が対象です。
歩行が自力していても歩行時の動揺が大きい場合も実施します。
腋窩介助でより安定した歩容の獲得を目指します。
腋窩介助の方法
手で下から支える方法
重心移動のコントロール
体幹動揺が大きいと、重心移動が過度になっていたり、不自然になっていたりする場合があります。
そのような場合に腋窩介助で強制的に重心移動をコントロールし、その人に合ったサポートが求められます。
重心の位置を把握する
重心の適切な位置は仙骨前面と僕は教わりました。色々な定義がありますが、大切なことは重心が前面にあるかです。
動揺が大きくなる場合は体幹が過度に伸展傾向にあり、重心の位置が仙骨の上方にあり安定しにくいのです。
まずは立位姿勢で重心が仙骨前面にくるよう体幹の屈曲や骨盤後傾を調整し、正しい姿勢学習を図りましょう。
最適な重心移動を考える
障害により移動時の重心移動が大きく変化します。痛みや麻痺、筋力低下など要因は様々です。そのような状態でも、その方に合った最適な重心移動があります。
動作が急にならず、動きがスムーズになること。
これを考慮して腋窩介助します。
足底への荷重の促し
どちらかの下肢の支持性が低い場合はどうしても足底への荷重が不足して立脚時間が短くなりがちです。
痛みがなく無理なく耐えられるギリギリまで足底への荷重を促しサポートすることで最適な重心移動に近づけることができます。
必要に応じて股関節周囲の筋群が働くよう、腋窩介助していない方の手で関節の制動や筋に刺激入力をします。
これが支持性を高める訓練にもなります。
仙骨前面への重心の促しに、さらに股関節から足底への荷重がスムーズになるようアシストしましょう。
装具や杖の使用も含めて、総合的に安定する方法を検討します。
重心を下げすぎないよう支える
重心を低くしてバランスを保とうとする場合があります。体幹や股関節伸筋群の筋力低下のため立位が不安定になり、体幹前傾を強めてしまうのです。
重心の下げすぎは円背を助長し、膝も曲がりやすく不良姿勢になります。呼吸機能も低下し耐久性は低下してしまいます。
下肢の振り出しにも余裕がなくなり歩行は不安定になってしまいます。
まずは手すり等で支持し、体幹をなるべく起こして真っ直ぐに近づけます。肩の脱力を促し、腹式呼吸で体幹を強化しましょう。
呼気時に体幹が前傾しやすいため、腋窩や胸骨前面から代償動作の抑制を促します。
立位が安定したら歩行でも同様に腋窩介助して姿勢修正を意識しましょう。
肘からしっかり支える方法
体幹動揺が大きい場合に、肘を通すことでしっかり保持することができます。
介助者は体に引き寄せるように、腋を締めて肘もしっかり曲げ続けましょう。
前方への傾倒がとても強い場合に用います。
腋窩介助の注意点
過介助しない
リハビリで意識するとても大切なこと、最小限の介助。生活においてなるべく本人の力を引き出すことがリハビリになります。
もちろん疲労や痛みがある場合は無理させないことが前提です。
生活リハビリについてはこちらをご参照下さい。
この最小介助は人により、動作により異なるため全てを把握することは難しいです。
日々のリハビリや練習で安全第一に接し、少しずつできそうな動きを引き出し最小介助を把握していきます。
過介助はその人の力を引き出せないため、身体機能が向上しません。必要な動きを日常でもすることで身体機能を保つことができます。
また、いつまでも介助に依存する傾向になり自立心が低下し、その人らしい生活獲得の妨げとなります。
移動の場合の過介助は車椅子の使用です。少しでも歩行能力があるなら日常で導入しましょう。
歩行の過介助はガッチリと腋窩や腰をつかむこと。
よく利用者さんから聞きます。
慣れていない家族やスタッフの場合過介助になりがちです。最初は体重を少し下から支える程度で、『固定』しないことが大切です。
ガッチリと固定されると反発する力が働いてしまい歩行は逆に不安定になるのです。
家族や他職種への伝達方法
実際の場面を見てもらうことが一番です。協力的な家族には積極的に助言しましょう。
助言のみの場面はできるだけわかりやすい言葉でポイントを絞って説明します。
他職種への実際の情報提供はなかなか時間を合わせられないことが多いと思います。また、介助の指摘は気が引けます。年齢や人間関係によってもコミュニケーションが取りにくい場合もあります。
それでもリハビリ職として、介護ではなく介助の必要性を様々な場面で発信しましょう。
カンファレンスや勉強会、委員会やミーティング。
発信し続け適切な介助が身体機能を高めることを認識してもらい、介助方法について問われる、頼りにされる存在になっていきます。
そのような環境に近づけるよう、組織全体での取り組みも大切です。
おわりに
腋窩介助に関わらず、その人にとっての望ましい最小介助、不足している能力のサポートがリハビリになります。そのサポートを理解して提供できることが、セラピストの技術といえます。
知識の勉強会はよくありますが、技術に対する学びの場が少ないです。技術があるから知識も活かせます。
技術は自分で身につけましょう。まずはあらゆる場面で理解しようと接して考えること。
働き方次第で絶対に成長できます。
良きリハビリで多くの方を援助し続けましょう!