ボディコントロールルーム

リハビリ、ダンス、ヨガ・ピラティスにおける身体の使い方を探求しています!

訪問看護師のための手軽にできるリハビリ

 

看護とリハビリで訪問を担当し、看護では体調管理や相談がメインでリハビリがなく、利用者さんから看護を辞めても良いのでは?ということがあります。

 

そんな時、看護師でも手軽にできるリハビリメニューがあれば心強いと思います。

 

だいたいの方に適応できる、僕もよく実戦している簡単なリハビリメニューを紹介します。

 

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【リハビリの目的】

訪問リハビリの目的は利用者により様々ですが、結局は関節の動きを引き出して必要な動作の獲得や改善を図ります。そのためにストレッチや筋力訓練、関節可動域訓練を行います。

 

①ストレッチ

②筋力訓練

③可動域訓練

 

この3つを全身を通して必要なところに実施しますが、簡単にできたり引き出すのが難しかったりします。

 

難しいところは専門職にしかできませんが、簡単なところは看護師さんにもできます。

 

この簡単な箇所の紹介です。

 

 

①ストレッチ

大きい筋肉、張りやすい筋肉はストレッチの対象になります。

 

です!

 

完全にストレッチを図らなくても、ある程度のストレッチで楽になって満足度が上がることがあります。痛みが軽減することもあります。

 

 

②筋力訓練

ポイントの筋群は体幹を中心としたインナーマッスルです。

 

入院による長期臥床、低活動等でたいていの方は患部以外にも基本的な体幹を中心としたインナーマッスルの筋力も低下しています。

 

起居や歩行動作の妨げになることもあります。

 

 

③可動域訓練

体幹と股関節にある程度の可動域が必要です。

ガチガチだと全身的に痛みやすく、バランスを崩しやすいため転倒リスクが上がります。

 

 

 

【ストレッチの方法】

様々な手技がありますが、簡単にできる方法はその筋肉を押すか、動かしてもらうです。慣れない方は動かしてもらうだけでも十分なストレッチになります。

 

①押す(指圧)

押す際は少しずつ、一点集中ではなく『面』で優しく押しましょう。身体の中心に向かうように、持続的に3秒程。親指の腹のところや手の平を使います。

ダイレクトストレッチといいますが、触った感触が柔らかくなれば大成功です。

ガチガチな筋肉なら少しでも押せるようになればストレッチできたと言えます。

 

②動かしてもらう

筋力が硬くなる要因として、筋肉が活動しないこと、活動し続けていることが挙げられます。

適度に動くことが硬くならないポイントです。

硬い筋力が働くように動作を促します。

 

 

【筋力訓練と可動域訓練の方法】

単純に自分の身体を動かすだけで十分です。

強い抵抗や重り等の負荷は使わず、しっかりと『動かし方』の指導を意識します。

 

『息を吐きながらゆっくりと丁寧に、無理しない』

 

これらを意識してリハビリします。

 

 

【簡単リハビリメニュー】

本題の手軽にできるリハビリメニューです。しっかり注意点を意識して実施しましょう。

  

★注意点
  • 痛みを出さない。
  • 利用者ができる範囲で、無理しない。
  • 運動指導は呼吸と合わせてゆっくりと。
  • ストレッチもできる範囲で。
  • 運動麻痺などで部分的にしっかり動かせない場合は補助したり固定したりし、非麻痺側だけでも良いので行う。

 

痛みや過度の疲労は利用者の負担になり、不調に陥ることがあります。信頼度も低下するので体調を確認しながらリハビリしましょう。

 

 

★仰向けのメニュー(両膝を立てる)
  • ①腹式呼吸  目安:3秒吸って5秒吐く (5〜10回)
  • ②膝を横に倒す  目安:片脚ずつ交互に10回
  • ③脚を挙げる  目安:片脚ずつ交互に10回
  • ④骨盤を左右に倒す  目安:左右交互に10回

 

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★座位のメニュー
  • ⑤肩の上げ下げ  目安:3〜5回
  • ⑥首の体操  目安:左右・前後3〜5往復
  • ⑦体幹屈伸  目安:前後3〜5往復
  • ⑧体幹捻り  目安:左右交互に10回

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合計8つが簡単リハビリメニューです。

これらの精度を高めて実施することで、肩・腰のストレッチ、体幹を中心とした筋力訓練と可動域訓練になります。

慣れれば簡単にできますが、雑にリハビリしてもしっかり効果が出ません。一つ一つのポイントをできる限り意識します。

 

 

【リハビリメニューのポイント】

①腹式呼吸

鼻で息を吸ってお腹を膨らませて、口で吐いてお腹を凹ませます。お腹を意識させ、次第にゆっくり呼吸できるよう指導。軽くお腹を吸ったときにタップし、吐いたときに押すと意識しやすくなります。目安として吸うときに3秒吐くときに5秒かけれれば『大変良い』です。

 

不慣れな場合は10回、慣れていれば5回呼吸します。

 

血中酸素濃度が低い方、呼吸が浅い方、脈拍が上昇しやすい方には特に大切です。以外と呼吸が上手にできない方や、コルセット着用で横隔膜や胸郭が硬い方、腰痛持ちの方も多く、とても有効なリハビリです。

 

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②膝を横に倒す

片脚ずつ、膝を曲げたまま外側に倒します。

3秒で吐いたときに倒し、3秒吸いながら元に戻します。左右交互に10回。

脚を動かす際にお腹を動かさない、ゆっくり脚をなるべく大きく開くことがポイントです。

 

内ももの力を抜けない方が多いです。脱力を促すと動きが大きくなりやすいですが、同時にお腹も動きやすく動作も速くなりがちです。回数を重ねるごとに精度を高めるよう指導します。

 

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③脚を挙げる

膝を曲げたまま股関節から太ももを持ち上げるように片脚ずつ交互に10回挙げます。先程のように3秒呼吸も同様にします。

膝が外側に開かないよう注意し、お尻や腰が浮かないように、ゆっくりと力を入れることが大切です。

立てたままの片方の膝もブレないよう意識できるとナイスです。

 

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④骨盤を左右に倒す

両膝を同時に息を吐きながら2〜3秒かけて左右交互に10回倒します。膝を戻すときに息を吸います。

最初は倒し過ぎないよう軽く行い、腰を浮かせないことです。倒しながら肩が浮かないこともポイントです。

腰部の疾患がある方では痛みが出ることがあります。急性期じゃない限り、正しく倒せば痛みは出ません。

腰痛が強い方こそこの運動を正しく行えるべきですが、痛みが治らない場合はセラピストに任せて中断しましょう。

 

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★座位の見方

背もたれなしで、横から見て真っ直ぐ座っている姿勢が望ましいです。後方に傾かないようお腹を意識させ、まずはしっかりと座位をとれること。円背の方も身体軸が垂直になるよう調整が必要ですが、慣れないと難しいかもしれません。円背だと骨盤は少し後ろに傾きます。

座位が後傾のままでは背部のストレッチがきかず効果半減です。

 

 

⑤肩の上げ下げ

息を吸いながら肩をすくめて、息を吐きながら力を抜いてストンと肩を下ろす。呼吸は2〜3秒かけましょう。

肩を下ろした後は肩の筋肉をダイレクトストレッチすると、さらに筋肉がほぐれやすいです。

また、下ろす際に体幹が後方に傾く方が多いです。体幹はブレないよう、お腹の力や意識を抜かないことがポイントです。

 

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⑥首の体操

少し顎を引いて、左右に3往復。倒すときに息を吐きます。顎を引くことで首の後ろの張りやすい筋肉が伸びます。

前後にも3往復。後ろに倒す際は無理させず、胸が上に向く感じで、天井を見るよう促します。

 

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⑦体幹屈伸

顎を引いて、背骨の上の方からゆっくり丸めるよう、息を吐きながらお腹を覗き込むように屈みます。

屈んだ状態で息を吸い、吐きながら背骨を積み上げるようにお腹から上体を起こします。

上を向くように、息を吸いながら胸を張ります。

これを3往復。ゆっくり呼吸と合わせましょう。

屈んだ状態で腰部周囲のダイレクトストレッチも可能なら行いましょう。

 

お尻が浮かないこと、背筋を伸ばさないことがポイントです。頑張って前に倒れようとし、腰部を張り詰めたまま屈むパターンがよくあります。屈み過ぎないよう、腰部の脱力を促しましょう。

 

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⑧体幹捻り

少し屈んだ状態で腕組みしてもらい、息を吐きながら身体を左右に捻ります。

骨盤やお尻がブレないよう固定したり、捻り動作を両肩を持って補助したりして、体幹の回旋動作を引き出します。

屈まないと身体が反れがちになり、背筋に過剰に力が入り腹筋群の筋力訓練になりません。

腹筋が弱い方は特に反れやすいのでしっかりサポートしましょう。

 

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【リハビリの対象】

要介護者の多くの方に適応できます。歩けない方や痛みが強い方も、できる範囲で提供できると良いです。

要支援者で屋外でも安定して10分歩行できる方にはさらに負荷をかけます。

  • ブリッジ
  • SLR(膝を伸ばして脚挙げ)
  • スクワット
  • カーフレイズ(背伸び)

これらの運動は負荷がかかるため、身体機能が低い方には正しく行わないと痛みを誘発したり、間違った筋力訓練になることがあります。

 

まずは簡単リハビリメニューをしっかり提供できることで、良い身体作りをサポートしましょう。

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