はじめに
梨状筋症候群とは、その名の通り梨状筋という筋肉が悪さをして、腰臀部の痛みやしびれ、座骨神経痛等の症状が現れる病態です。
梨状筋を整えることで症状は改善しやすいです。以外と認識されずに、ストレッチも不足しがちになります。技術面については専門職向けの記事になります。
梨状筋症候群について
梨状筋。
『リジョウキン、ナシジョウキン』どちらが正しい読み方かはわかりません。学生時代、教科担当のおじいちゃん先生は『ナシ』と読みましたが、違う先生は『リ』と読みました。
ナシの形をしているからナシジョウキンと説明していたので、ナシが正しいかもです。
個人的にはリの方が読みやすく使っています。
腰の下方に位置し、臀部あたりから股関節の外側に付着する、身体と脚を繋ぐ重要な筋肉です。
梨状筋が硬くなると、付近を通る神経を圧迫して症状が出たり、筋肉が痛んだりします。そのため歩くと痛みが強まることがあります。
梨状筋症候群により座骨神経痛を併発することもあります。
改善方法
梨状筋をストレッチして柔らかくします。
梨状筋は股関節を外旋させる作用があります。
外旋とは、外側に脚をねじるように開くこと。膝が外側に向けば股関節は外旋していることになります。
梨状筋が硬くなると伸びが不足するため、反対の作用である内旋運動に制限がかかります。
その他に、梨状筋は股関節が屈曲した際にも伸ばされます。屈曲は太腿がお腹側に曲がる運動です。
梨状筋が硬くなると屈曲運動にも制限がかかることになります。
内旋・屈曲の動きが拡大できれば、梨状筋はストレッチでき柔らかくなったということになります。
内旋運動のポイント
梨状筋の他に、股関節の深層に外旋作用を持つ筋肉群があり、それら全てがストレッチできないと内旋運動は円滑にできません。
また梨状筋が硬くなっている場合、股関節を取り巻くその他の筋群も硬くなり、股関節の位置が前方に偏位することがよく見られます。股関節を正しい位置に修正しないと内旋運動を引き出しにくいです。
つまり、梨状筋をしっかりストレッチするには股関節周囲の筋群全てを弛める必要があるのです。
セラピストの技術が問われます。
関節を正しい位置に修正すると、筋肉は無理なくストレッチされます。
まずは股関節の前方偏位を修正しましょう。
梨状筋が硬い場合のストレッチ方法
第一段階
仰向けでストレッチする方の膝を立てます。
股関節を前方から圧迫します。膝が開かないようしっかり押さえましょう。
次に膝を内側に倒します。(内旋)
この時点で倒れない場合は股関節周囲の筋群をダイレクトストレッチします。
股関節外側の筋群がパツパツなため、大転子周囲をしっかり押しましょう。後面から側面にかけてストレッチし、内側に膝を捻じ込むように操作します。ストレッチで筋が緩んだら関節を動かし、少しずつ修正を進めます。
ある程度内旋運動が確保できたら、屈曲運動を促します。
ポイント
・股関節の前方偏位を抑えるようしっかりと固定する。
・中間位までいかない場合は多少外旋位でも良いので屈曲の運動軸を合わせる(股関節内運動を引き出す)
これらを意識すれば90°までは大抵行きます。
ここまでは股関節周囲のアウター筋群がある程度ストレッチされれば関節が動くからです。
90°以上の動きを引き出すためには梨状筋のストレッチが重要になります。
第二段階
股関節をなるべく屈曲位で保持し、内外旋の他動運動と、内旋位からの外旋運動を促します。
伸長位からの筋収縮で梨状筋がやっと伸びてきます。
その後股関節屈曲を深めていきます。
この機能訓練の繰り返しにより梨状筋の伸長性を引き出し、少しずつ可動域拡大を図りましょう!
ポイント
・股関節屈曲、中間位をしっかりと固定する。外旋位になりやすいので注意!
・外旋の筋収縮は軽めに促す。
使い慣れていないため違う筋群で外旋しようとするパターンが多いため、軽めの正確な収縮を引き出す。
・屈曲の促通時も外旋位にならないよう注意する。梨状筋の伸長を最大限に促す!
運動指導
ストレッチ後は正しい梨状筋の伸長を自動運動で引き出すことで、更なる硬化を防止します。
内旋や屈曲の自主運動も指導しましょう。筋肉は日頃からストレッチされた方が明らかに伸びやすくなります。
股関節中間位での屈曲運動
立位で自動運動を促します。外旋位になりやすい場合はエラーに気付かせ、修正するよう指導します。梨状筋が自動運動で伸長されることが大切です。
ポイント
・『膝をおへそに寄せるように挙げましょう』と声かけしましょう。気持ち内旋するくらいがちょうど良いです。
・骨盤の代償運動が出ないよう要注意!
脚の振り出し時に、骨盤挙上と回旋運動の代償運動の割合が多いため、股関節屈曲運動が不足することが多いです。
お腹を意識させ、骨盤を徒手的に抑え、なるべく代償運動が出ないようコントロールします。
腰臀部の痛みによっては安静も必要
歩いたり、立ち仕事をしたりと運動に伴う痛みはストレッチによる改善が望めます。
安静にしていてもジンジンする、歩けないくらい痛む等、症状が強い場合は神経痛が悪化していることもあります。
運動による神経への刺激は症状を強めることがあるので安静も必要でしょう。
1.2週間安静で症状を軽減し、少しずつ機能訓練を進めて行くようにします。
おわりに
梨状筋は脚と体幹を繋ぐとても重要な筋肉であり、負担もかかりやすいです。硬くなり過ぎないよう日頃から運動すること、良姿勢を保ち脚の負担を軽減することが大切です。
梨状筋の理解を深めて生きましょう!