はじめに
相撲を観ていて、解説で元横綱稀勢の里が独立し稽古では軸を造る練習をしっかりしていると話されていました。
動画を撮って弟子達にフォームを毎回チェックしているほど、稽古において大切にしているようです。
どんなスポーツや運動においても軸の力は欠かせません。今回は相撲と軸の関係について考えてみました。
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相撲に求められる軸
相撲についての知識はとても浅いので、今回はよく見る『突っ張り』と『寄り切り』にポイントを当てます。
突っ張りと軸
突っ張りの使い方も色々あるようです。下から上に回すように、相手の重心を浮かせて次の技に繋げる…
とりあえず、突っ張りに関わる押す力もとても大切だと思うので軸と関連付けてみます。
突っ張りが相手に当たったときに、その威力をなるべく弱らせないようにすることで押すことができます。
ボールが壁にぶつかったら跳ね返ってきます。
反力が働くためです。
突っ張りも同じように反力が働きます。この反力が働きすぎると突っ張りも弱くなり、相手を押せません。
ここで大切になるのが軸の力です。
反力から更に抗する力を全身で出すことで突っ張りの威力が減弱しないで繰り出すことができます。
この全身の力=軸の力です。
反力がすぐに働くのは手ですが、常に全身を固定する力を働かせて反力を上回る力で押し出します。
体幹の固定と、地面とを繋ぐ脚の固定力、腕がブレないようにする固定力、これが軸の力になります。
全てがバランス良く連動して働くことで突っ張りを押し出す力が増大します。
その中でも手足を繋ぐ体幹の固定力が安定することで、軸の力の連動が発揮されます。
明らかに小柄な力士が競り勝つことがあるのは、勢いと軸の力の総力を上手く連動させ相手の力を上回るのです。
そして押し出す腕の力、前鋸筋(ぜんきょきん)!
肩甲骨と肋骨を繋ぎます。
個人的にとても好きな筋肉です!
この筋力をしっかり軸からブレずに発揮するためにも軸の固定力が求められます。
つまり突っ張りは、当たったときの反力とそれ以上に軸を固定する力があることで、威力のある技になるのです。
寄り切りと軸
寄り切りはまわしをつかんで相手に身体を密着させて身体全体を使って土俵から出す技です。
力士達は相当の体重がそもそもあるのでお互い簡単に動かすことはできません。
体重のかけ方やバランスの崩し方で攻防し、隙をつくことで寄り切りが成功するのです。
そこには未知のテクニックや経験値が求められるのでしょう。
寄り切りの技が決まる際の軸について考えます。
100kg以上の人を動かすパワー。
凄まじいですね。力士という言葉が合致しております。
そのパワーの元はまずは体重でしょう。
しかし体重だけでは力を発揮しきれません。
軸が強くあることで体重をかけたパワーが発揮できます。
例えばかなり大きめなふにゃふにゃな棒100kgが自分に振りかぶってきたとしてそれを受け止めても、棒はふにゃふにゃなので曲がってしまい重さはあるけど対してダメージはないでしょう。
これが100kgの硬い鉄の棒なら致命傷になると思いませんか?
勢いによって威力は全然変わりますが…
そう、この勢いと硬さがポイントです。
完全に腹筋です。
体幹を固定する腹筋で軸を強化し、身体を曲げるように腹筋を使って勢いを増大させます。更に相手を寄り切れるほどの軸を運べる足腰の強さが求められます。
軸と股関節を繋ぐ腸腰筋(ちょうようきん)です。
この筋が腹筋と連動することで相手を動かす力が発揮されます。自分を固定する力にもなります。
そして腕の力が合わさり寄り切りが決まります。
つまり、身体を前屈みになるように固定する力(腹筋、腸腰筋)を入れ続けて、その他の力も連動させ上半身と腕は柔軟に使い寄り切りしているのです。
ちなみに腸腰筋を鍛えるのに股関節の曲がる角度が深い方が効率的で力も発揮しやすいので、重心を深くするようにシコを踏む練習はとても理にかなっています。
力士の姿勢と軸
姿勢によって軸の強さが強めかどうか判断できます。
先程説明したように、求められるのは腹筋と腸腰筋、さらには前鋸筋の押す力です。
人間はこれらの力が不足しがちになります。
重力に負けないように姿勢を保つため、背中側の筋肉(抗重力筋)が必然的に優位に働くためです。
押す力が日頃から使えている人と不足している人には姿勢に違いがあります。
肩の位置です。
姿勢を横から見て、背中が反れて肩が後方にきている場合は筋力不足なパターンです。
背中側の筋肉が働き過ぎて背中が反れてしまい、アゴは上がり肩が後方に位置してしまいます。猫背になります。
押す力単体だけで比べればとても強いでしょうが、問題は力の連動です。
背中が反れる分屈んで力を発揮するまでにタイムラグが生じ、筋肉の連動が遅れてしまうのです。
これが軸の弱さになります。
軸を強くして体幹を固定する持続的な力を働かせながら、瞬発的にその他の力を連動させて立ち回ることが求められます。
軸の弱さはケガのリスクも高まる
背中や腰の反りが大きいとケガのリスクも高まります。
身体を反るように使い過ぎれば腰の筋肉に過剰に負担がかかり、腰痛の原因になります。
腰の筋肉が腫れたり硬くなったりして脊髄や座骨神経を圧迫し、ひどい場合は脊柱管狭窄症やヘルニアになってしまうのです。
手足も背中が反れた状態で無理に力んでしまうと、相対している場合は反力を手足だけで補うことになり、肘や膝に大きな負担がかかってしまいます。
軸を強くして、なるべく身体にエラー動作が出ないよう日頃からトレーニングする必要があります。
軸の強さは誰にとっても必要
相撲にポイントを当てましたが、誰にでも軸の強さは必要です。
人間は二足歩行をして生活します。
歩くのにも軸の強さが必要で、腹筋をしっかり使うことで安定して歩き続けることができます。
腰や膝が痛くなる場合はお腹が突き出てしまい背中は反っていることが多いです。
重心が腰部方向に移動しがちで、お腹を意識して凹ますように歩くことで軸を強くすることができます。
おわりに
人それぞれライフスタイルが違います。軸の強さはライフスタイルに合った強さが求められ、激しいスポーツをする場合はその運動に耐えうる軸が必要です。
逆にそこまで活動しない場合は背中側の筋肉疲労に注意し、ケガや病気、更なる低活動に陥らないよう気をつける必要があります。
自分に合った運動習慣を続けて、健康寿命を伸ばしましょう!