指導者は専門的な知識や技術を有しますが、それらを伝えるための指導する力が求められます。
学ぶより、伝えることがとても難しいと僕は感じます。
今回は運動指導における、見る力についてです。
【指導するために】
指導するということは、その時点で相手に何らかの情報を伝える必要があります。伝えるためには良好な関係作りや適切な環境も大切です。そして何より技術を指導します。
相手の能力において、
『何が足りないのか』
『どうすれば良いのか』
相手の能力の段階を把握して情報を伝えることで、『使えていない能力』を引き出すことが求められるのです。
【見るべきはお腹の力、コア!】
全身的なスポーツや運動において、全てに共通する要素があります。
『お腹の力(コア)を使えているかどうか』
僕はリハビリ場面、ダンス、ピラティスにおける指導をしておりますが、3つともコアの使い方がとても重要になります。
コアが使えているからどのような運動も精度が上がり、強く、美しいフォームになります。
健全で病気になりにくい身体になるのです。
【コアの見方】
お腹ですが、ただ見るだけでは意味がありません。
コアを使えているか、手足と力が伝達し合っているかを見ます。
コアに力が伝達されていない場合を『抜けている』と僕は言います。
抜けているとその分の力が腰や肩、その他の部位に力が伝わり、コアが担うべき力を補うことになります。この負担が続くと首や腰の疾患につながります。
力の伝達を見るには慣れが必要です。
《見る指標》
①コアの形状
②コアの安定性
③コアの可動性
①コアの形状
コアはあばら骨下から骨盤の底面までです。
筒状になっており、ピラティスでは『パワーハウス』とも言います。家における、基礎の部分。
家の基礎は真っ直ぐ建つことで安定します。斜めに建っていたら倒壊の恐れがありますよね。
人間においても同じことが言えます。
コアが真っ直ぐにバランスをとれているか。
まずは形状を見てどのようなコアになっているか評価します。
・腹部の膨らみ具合
お腹が出過ぎていないかチェック。それだけでコアを使えているかまず判断できる。
・背骨のライン
コア全体の傾きをチェック。背骨は少し弯曲するが反り過ぎていないか、逆に潰れていないか。骨盤が真っ直ぐ起きているか判断する。
・胸郭の膨らみ具合
高齢者の場合、呼吸機能が低下し胸郭が硬くなりコアが上から潰れてくることがある。あばら骨すぐ下に触れて横隔膜の硬さもチェック。
②コアの安定性
本来コアは動作時に手足の力を出し切るために安定しています。
例えば手を前に突き出す。パンチですね。パンチした瞬間肩から前方への力が発生します。それと同時に肩以外の身体の部位が前方に行かないよう後方への力も発生します。
この後方への力に耐えるべき箇所がコアです。
動かずに安定することでパンチにも力が伝わります。
安定していない場合、コアが抜けている場合パンチ力に耐えられず、肩が後方にブレるでしょう。パンチが当たった場合も力が伝わりきらず、力は弱く肩から身体全体が後方にブレることになります。
手足の力に耐えること、これがコアの安定性です。
身体全体を使うどんな動作時においてもコアが働くため、抜けているか、安定しているかを把握します。
歩行時にはコアの安定性が乏しいと腰がブレる様子がよく見られます。左右差がある場合もあり、弱い方への左右のブレが強まります。
後方へのブレもよく見られます。脚をつく度に腰が反れてしまうのです。
これらのブレは腰に負担となり、腰痛症状として現れてきます。コアが使えていない分お腹も膨らんでいることが多いです。
首や肩も同様に、コアの安定が不十分だと負担がかかりやすく痛みやすい部位なのです。
③コアの可動性
コアが安定していても、固めすぎで硬くなることがあります。一見多くの動きも円滑に見えますが、必要に応じてコアの可動性も重要になります。
・腰背部のストレッチ
・腰背部の強さ
この2つの要素が求められます。
腰の筋肉は広範囲にあり、背骨や神経に密接しております。そのため、腰の筋肉が硬くなったり筋力不足になったりしないように注意することが必要です。
急に大きく屈んだり、一気に重い物を持ち上げたりしたとき、腰の筋肉が耐えきれずギックリ腰のように痛みを発することがあるのです。
骨盤を後方に倒すことで腰背部のストレッチになり、骨盤を前方に起こすことで腰背部の強化になります。
コアの一部の骨盤が必要に応じて可動することで、不意な動きや激しい動作、良いパフォーマンスをサポートしてくれるのです。
【必要な指導をする】
コアを見ることができたら、不足しているところを指導します。
コアの形状に問題が有れば整えるようストレッチや呼吸が必要でしょう。
コアが抜けていることを自覚させ、必要な安定を促す。
安定できなければ補助や口頭で筋肉の使い方を指導、筋力強化や不要な動きの抑制を図ります。
良い動きを反復することで筋肉が定着し、どんどん無意識に必要な動かし方を習得します。
身体の変化を実感できればチベーションが高まり技術も少しずつ高まります。
段階に応じた必要な指導をするためには、相手を見る力が求められるのです。