頭痛に対する運動で自動運動を紹介しました。
首や肩の一般的な体操です。
https://www.bodycontrol55.com/entry/2020/05/16/頭痛の対処
リハビリ場面ではさらなる頸部の機能訓練が求められます。頸椎疾患や不良姿勢による頸部の過緊張は、自分では緩められないくらい硬くなっているからです。
頸部の機能訓練について説明します。
そもそも、頸部の可動域訓練を積極的に行なっている方が少なく感じます。
頸椎症や後縦靭帯骨化症の方は四肢への障害が目立つため、頸部の訓練が疎かになっている方が多い印象です。
頸部の過緊張が軽減するだけで、四肢の運動性やしびれや痛みが緩解することはよくあります。
頸部の評価と機能訓練行なっていきましょう!
《ここは注意!!》
①術後の骨癒合
②神経症状を増悪させない
①骨癒合
固定術等でまだ骨癒合の最中では、術部の強い外力はNGです。
②神経症状
主に頸部伸展・回旋が伴うと神経が伸長され神経症状が増悪することがあります。
《評価》
・頸部の痛み、圧痛の程度と部位
・頭のポジション、前傾具合とあごの上がり具合
・首、肩の筋緊張
・自動運動の程度
これからを評価して、リハビリ後にどの程度改善できたか把握しましょう。できれば結果を対象者と共有・共感しましょう。
《機能訓練の目標》
①僧帽筋の弛緩による頭部と頸部の分離運動。
②頸椎と頭部の複合運動による脊柱起立筋群のストレッチ。
③僧帽筋を使い過ぎずに、頭部を正中位に保持できる。
これらの機能獲得により頭頸部の負担が減ります。頸部には神経も多いです。過緊張による神経と血管の圧迫が様々な症状を増悪させるため、しっかり整えましょう。
機能訓練の基本、緩めて、整えて、ストレッチと運動です。
まず僧帽筋を緩めましょう。たいていの方が過緊張です。圧痛をすぐに無くせるくらい緩めたいですが、かなり硬い方は圧痛が残存しやすいです。軽減できれば良いので完全を求めず機能訓練を進める必要があります。
姿勢は背臥位が望ましいです。座位では自然に僧帽筋に緊張が入るので弛緩させるのが難しいです。
《方法》
①僧帽筋のダイレクトストレッチ
・肩が機能的姿位の軽度屈曲位になるよう、上肢全体を持つ。
・肩のポジションを保持しながら肩甲骨下制。肩甲骨を下から支えるように、痛みのない範囲で実施。
・下制した状態で僧帽筋上部線維の筋腹をダイレクトストレッチ!筋腹から停止部にかけても実施。
②僧帽筋収縮によるストレッチ
・下制の状態から挙上。下制位で等尺性収縮させるよう指示。2秒くらい抵抗をかけ、挙上は自動運動で最大可動域まで実施。
それぞれ3回ほど行えばある程度の弛緩を促せます。しっかり緊張を確認しましょう。
③僧帽筋停止部のストレッチ
セラピストは上から頭部をしっかり両手で操作できるポジションが望ましいです。側方からでは関節運動の軸もずれやすく、力を入れにくいです。
・両手で頭を持ち上げる。首の力を抜くよう指示。たいてい抜けない方が多いです。
・頸椎、頭部のアライメントを整える。
頭部が左右どちらかに側屈している場合、正中位へ。できれば頸椎の歪みも上から見て正中位に調整。横突起を少しずつ押します。
・正中位を保ちながら、頭部屈曲。
頸椎が前傾してこないよう頭部を床方向に押すように他動屈曲。
・同時に僧帽筋停止部周囲をもみほぐす。
・頭部を中間位に戻してまた他動屈曲の繰り返し。
この時点までくればだいぶ僧帽筋が弛緩するので自然に脱力してきます。
・頭の重みを持ちながら、頭部屈曲の軽めの自動運動。あごを少し引くだけと指示します。
これで頭部の分離運動を獲得できます。
④脊柱起立筋群のストレッチ
頸椎全体の屈曲を引き出します!
首が硬い方は頸椎の動きが乏しいです。胸椎レベルから前傾して首を使っているためです。スマホネックもその一つでしょう。猫背で顎が上がるパターンは頸椎の運動を妨げ脊柱起立筋群をどんどん硬くしているのです。
・頭部屈曲を保持して、さらに頸椎屈曲他動運動。少し頸部全体が屈曲すればOKです。
・頭部屈曲と、頸椎正中位を保持してから少しずつ頭部側屈+頸椎側屈。
この代償を抑えるのが難しいです。すぐに回旋や伸展が少しずつ出るクセが強いので、慎重に固定しながら実施。
・硬い筋肉はすぐに伸長されないので、無理せずにじわじわ他動運動し、僧帽筋停止部周囲とその深部をダイレクトストレッチします。
・頭部の重みを持ち頭部と頸部の複合自動運動。軽い力で、起立筋群が伸長されるよう実施。伸展方向にも軽く筋収縮を練習する。
⑤頭部の正中位保持
・座位で頭部のアライメント修正。
あごを引いて、首を後方に。脊柱起立筋群の持続的な軽い収縮を促します。その感覚を意識付けし、正中位保持を促します。
・そのまま全方向にゆっくり自動運動。
代償が出ないようエラー時は修正します。正中位を保てるよう後頭骨を後方に支えるとスムーズにできます。
頸部のリハビリは地味ですが、痛みが慢性化していたり、全身の緊張が高めだったり、倦怠感が強かったりする場合は症状の改善に繋がることがあります。
椎間関節の動きはとても多様で動かしにくく難しいです。評価を繰り返し、何度も少しずつ機能訓練を実施してスキル向上を図りましょう!そうすることで自分の観察力が鍛えられます。
一人でも症状を軽減できますように!